「克」自分に克つ!



 勝負は相手がいて初めて成り立つもの。あなたが勝てば、必ず誰かが負けます。他人を蹴落とす闘争心がないと勝負には勝てない?
いいえ、他の誰も蹴落とさない勝負があるんです。

 「己に克つ」という言葉があります。自分との勝負が一番苦難を強いられるのだと知ったのは、展覧会への出品に燃えていた頃でした。
 審査当日は結果を天に任せるしかないので、出品までの作品制作期間が己との勝負となります。この期間は、大勢の仲間や先輩たちと勉強する機会がありました。周りが上達すれば、当然、こちらも燃えます。
 けれども、そんな時には大抵、欲が出ているもので、
「この線はワザとらしいな。上手く見せたいという気持ちがあからさまだ。」
先生にはあっという間に意図がバレ、弾かれてしまいます。

「勝ちたいんだろ?」悪魔のささやきと、
「欲を出すなよ。」天使の戒め。
 両極端のメッセージに気持ちを引っ張られながら、最高の自分を表現していくことは、とてつもなく苦難でした。

 この時、何に気持ちが囚われていたか?
周りとの比較でした。先生に誉められている先輩がいれば、作品を覗きに行き、数百枚もの清書を広げている仲間がいれば、サボってしまった自分に焦り・・・、日々、周囲の状況に揺さぶられてしまうのです。
 自分の軸を見失っているとは、この状態です。創作意欲よりも羨望と嫉妬に燃えてしまっては己に克つことは出来ず、結果、展覧会の勝負にも勝てないのでした。

 勝負って意外にシンプル。周りと比較してしまうから怯えてしまう。それなら、周囲はジャガイモばかりと思えば良いのです。怖がる必要がないんですね。そうしたら変な嫉妬が消えました。見つめるのは己だけです。
 ただ頑張る、ひたむきに頑張る・・・そういう爽やかな気持ちを得た気がしました。この気持ちが実際の勝負にも生かされたのです。

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